皆様は人生でどんな時、または瞬間に「違和感」を感じてきたのだろうか。
そんなこといちいち憶えていられないだろうが、皆1コか2コは印象的なエピソードをお持ちなのではないだろうかと思う。
私はある日の朝、突然「おばあちゃんに会いたいなぁ。」と思い、それを自然と口に出していた。
朝食を作っている時だった。
おばあちゃんは数年前施設に入所して以来、家に居る時よりもどんどん元気になりピンピンしていた。
だがこの時、私の中で何故か突如「おばあちゃんに会いたい」と思う気持ちが溢れ出て来たのだ。こんなことは今までには無いことだった。
それを聞いた夫が「そう思った時は、会いに行った方が良い。行って来れば?」と言ってくれた。
今思えば、夫が私の気まぐれ発言に対してこのようなことを本気で言ってくれること自体が稀なことだった。
しかし私はその少し前に実家に帰省していたこともあり
「ありがとう。でも、この前帰ったばかりだし。大丈夫」と答えたのだが、
その約一か月後、おばあちゃんの具合が悪いとの連絡があり、それから数日後、あっという間におばあちゃんは天国に行ってしまった。
おばあちゃんとお別れをして大阪に帰ってきて、約一か月前に感じた『違和感』を思い出した私は
「おばあちゃんに会いたい。って思った時、会いに行って色々話せばよかったなぁ。」
なんて思ったりした。
しかし、あの時感じた『違和感』はあまりに繊細だった。
時に『違和感』は、思わずスルーしてしまいそうになるくらい、些細なことがある。
こんなこともあった。
私が大阪に引っ越して来てから引きこもりをしていた時期に、突如「筋肉をつけよう!」と閃いたことがあった。
引きこもって暇を持て余しているとろくなことを思いつかないものである。
「ジムに通う前に歩け。むしろ走れ!!」と過去の自分に言いたくなる。
『筋肉をつければ万事、上手く行く!』とわけのわからない理論を閃いた私は、大阪で通えるパーソナルジムを探しまくり、意を決してジムの体験予約を申し込んだ。
夫は私のやろうとすることに「よく考えろ」と常に反対するのだが、パーソナルジムに関して、夫は自身の体験から効果があると実感していたこともあってか、この時は素直に「体験だけなら行ってくれば。」と言ってくれたのだ。
予約した当日、私は電車でパーソナルジムへ向かった。
因みに夫からは「とりあえず、話だけ聞いてきなよ。」と言われていた。
私は「うん!わかった!!」と答えて家を出た。
しかし、電車に乗った時点で既に夫からの「話だけ聞いてこい」という指令は頭から吹っ飛んでいた。
それどころか私の脳内では、パーソナルジムとの契約後のトレーニングや、痩せて理想の筋肉がついた自分の体形にまで妄想が膨らんでいたのだ。
あちら側(パーソナルジム)からしたら、丸々と太ったカモがネギを背負ってやって来たという最高のシチュエーションだっただろう。
到着すると、私を担当してくれたのはそのジム内でTOPトレーナーだと自称する、私より超年下の男性だった。
先ず事前アンケートを書かされた。
自分の身長・体重・これまでに試したダイエット法・何キロ痩せたいか?等、かなりパーソナルな直球質問のオンパレードだったが、それに対し私は律儀に赤裸々に回答した。
そしてアンケートを元にトレーニングの具体的な説明が始まった。
「これまで、どんなダイエットをして来たのか?」というアンケート通りの質問から始まり、私は自分のダイエット人生の全てを、この初対面の男に事細かに説明した。
恐らくこの担当者は丸々と太ったカモネギ状態の私を見て
「コイツはもう既にこのジムに通う気満々だ。」と、見透かしていたのだろう。
始めは丁寧で真摯だった担当者の男の態度が、私を見透かしていくうちに微かに変化して行くように感じたのだ。
私は、人の『ネガティブな思考や雰囲気』には、かなり繊細に反応する特性を持っている。
段々と人格が変わって行く担当者と話し続けていくうちに、私の中で
「こいつ、嫌なヤツだな。嫌い。」
という感情が芽生えてしまった。
そんな私の気持ちなんかつゆ知らず、ジム内でTOPトレーナーだと豪語するこの男は、
「自分はモデルさんやらなんやらの個別対応に忙しいため、私のトレーニングは別の人が担当してくれることになるだろう。」
と自慢してきたのである。
それを聞いて私は心から安心した。
「トレーニングの担当がこいつじゃないなら、まぁいいか。」と胸を撫で下ろし、
その場で8か月プランの契約をしたのである。
夫からの「とりあえず話だけ、聞いてこい。」という言葉は、風に吹かれ虚しく消えて行ったのだった。
家に着いた私は、契約を済ませたことをテンションMAXで夫に報告した。
夫は仕事中だというのにそんなのお構いなしの怒涛のLINE攻撃は、割といつものことである。
私は迷惑極まりない自己中女なのだ。
夫は「もう、契約して来ちゃったの!?」と驚いていたが、私のやる気満々な様子を見て
「大金を払うんだから、それなりに頑張りなよ。」と応援してくれたのだった。
夫への報告が済み、私は部屋でひとり、ホッとひと息ついていた。
そして「それにしてもアイツ、嫌なヤツだったなー…」
なんて考えていたこの時、ここで唐突に、何だかわからない『違和感』が発生したのである!
「そういえば、ネットで『パーソナルジム 大阪』で検索したけど…、今日行ったジムをTwitterでは調べてなかったな。」(当時はXになる前)
私はネット検索をしてジムについての口コミ等は調べ尽くし、その内容に納得していたのだが、Twitterは見ていなかったのだ。
このことにふと気がつき、速攻、Twitterで契約してきたジム名を検索してみた。
すると…、何と!!
そのジムと大揉めしている様子の人のツイートが、これでもか!とじゃんじゃん出てくるではないか!!
更に、大揉めしているのは1人の人ではない上に、他にも大勢の人がそのジムについての『ヤバさ』を呟きまくっていたのだ!!
私は一気に血の気が引いた…!しかし検索する手は全く止まらなかった!
スクロールし尽くしたが、とにかくそのジムについての悪口が地獄のように大量に呟かれていた。
「うそでしょ………!w(゚Д゚)w…ヤバい!やばい、やばいやばいやばいやばい!やばばばばばばー!」
私は夫に、また怒涛のLINEを送りまくった。
ついさっきテンションMAXで夫に報告してから、ほんの2~3時間しか経っていなかった。
同時に、なんとか契約をキャンセルできないかと、契約解除の方法を調べまくっていた。
仕事中にも関わらず、夫は私からのLINEを読んで驚き、Twitterで調べてその内容を見てくれたようだった。
夫「これは酷い!!解約できそう?もし難しそうだったら一緒に話に行くから、とりあえずキャンセルできないか聞いてみた方が良いね。」
私「うん、被害者の皆様の話だと、一回でも通ってしまうとキャンセルが難しいらしい!一度も通ってない今のうちなら契約キャンセルできるかも!」
…あの地獄のような悪口大会を読んでもまだ
「そんなの関係ねぇ!あたいは、このジムに通うんだい!!」
と思える強メンタルな人がいるなら、私は心から尊敬する。
そのくらい、Twitterはヤバい内容てんこ盛りの、常軌を逸したお祭り騒ぎだったのである…。
早速メールで顧客窓口に連絡を入れると、次の日、私の嫌いな自称TOPトレーナーである担当者から直接電話で連絡が来た。
担「突然、どうされたんですか??キャンセルの理由を聞かせてもらえますか??」
と、かなり強めに言われた。
私は『Twitterで地獄のような大量の悪口大会を読んだ』とは言わずに
私「一旦、冷静に考えてみたくなったんです。本当に申し訳ないですが、キャンセルさせて下さい。」と言い張った。
自称TOP男は全く納得できていない様子だったが、私の「とにかくキャンセルさせて欲しい。」の一点張りに根負けし、無事に契約キャンセルにこじつけたのであった。
この時だけは自分の主張を押し通す強情っぷりが役に立ったと思えて、心から安堵した瞬間だった。
契約解除に成功すると、今回のことに関して珍しく夫が私を褒め称えてくれた。
夫「よくTwitterで調べたね、偉い!!ネットの口コミには全く無かった情報だもんね。微かな『違和感』に従ったのが奇跡!!すごい!手遅れになる前に気がついて良かったね。」
私は褒めてもらえて本当に嬉しくて有頂天だったが、今思えば恐らく、この時で夫からの一生分の誉め言葉をもらってしまったような気がする。
この事件以降、私が習い事に通いたいとか講演会に行きたいとか、何か言い出す度に、夫は簡単には賛成しなくなってしまったのであった…。
そして悪評高いこのパーソナルジムは、Twitterで地獄のような悪口を言われまくっていることにどうやら自分たちで気がついたらしい。
私のようにキャンセルしたいと申し出た人が他にも出ていたのかもしれない。
その後、ジム公式Twitterアカウントから、パーソナルトレーニングなどについてのツイートが数秒毎に呟かれまくるという祭りが長期間、開催され続けた。
そのうちジムの名前をTwitterで検索しても、いくらスクロールしても悪評は表示されなくなってしまったのである。
こちらからしたら、もっと違う意味で企業努力をしていただきたいものである。
因みに、普段から私は自分の違和感よりも、夫の『違和感』(直感)をとても怖れて生活している。
「封印された箱」を読んで下さっている方は理解して頂けるのではないだろうか。
私は、『違和感』を感じた瞬間にどんな行動を取るか?ということが重要な気がしてならないのだが、その微かな『違和感』に従って素直に行動できる人は実は少数なのではないか、と思っている。
『違和感』は本当に繊細なものであり、目の前の現実や、自分のエゴの声でかき消されてしまうことが多いと感じているためこの考えに至っているのだ。
しかし私の夫は、どんなに些細な違和感も見逃さず、自分の直感に従って行動する人間である。
そして夫の行動によって、ある時は会社で秘密裏に行われていた不正を暴きまくったり、またある時は解決不可能と思われた事件の真相を突き止めたりしてきたという実績もあるのだ。
私「ねぇ、なんで?どうしてわかったの?」
夫「なんでかわかんないけど、ふと気になったから。いつもそう。ただ、それだけ。」
私「なにそれ!こっわー!!!ウキャキャー!!」(大爆笑)
私は夫の不正暴き話が大好きすぎて、何度も何度も同じ話を聞いては、毎回同じリアクションをして、最後には必ずこの会話で終わっている。
そしてその後、いつも思う。
何故いつもいつも、アンチスピの夫が誰よりもスピっているのだろうか…ಠಿ_ಠ?と。
おしまい
皆様の話も聞いてみたいなぁ!なんて思いながら、書きました♪
最後まで読んできただき、本当にありがとうございました☆彡
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