夫との出会い②

自分語り

前回までのあらすじは是非、

【夫との出会い①】を読んで頂きたい。

すでに【夫との出会い①】を読んで頂いた方にはご理解頂けていると思うが、前回の記事で夫と私は出逢っていない。タイトル詐欺だと責められても反論できない。

今回の記事でようやく夫と出逢う。しかし、まだ恋は始まらない。

私は遂に決心して、初めて勤務する店の従業員部屋のドアをノックした。

「トン・トン・トン…(ド緊張)」

すぐに扉が開いた。

私 「お疲れ様です!明日からこちらの店舗でお世話になる、マオと申します。宜しくお願い致します。」

部屋の中には、男性社員が2人居た。

ドアを開けてくれた社員

そしてわざわざ立ちあがり私を部屋に迎え入れてくれた社員だ。

「おぉ、お疲れさん。どうぞ、入りー。」

私 「はい。失礼致します。」

「お疲れさんでした。引っ越しは無事に終わったん??」

私 「はい!ありがとうございます。」

第一印象ではこの社員の笑顔と言葉がとても自然で優しそうで、人当たりが良さそうな雰囲気に安心したのをよく憶えている。

何だか思っていたよりも和やかな雰囲気に、私は内心ホッとした。どうやらこの場でいきなり殺されるようなことは無さそうである。

少しだけ緊張が解けたところで、社員を改めて観察してみた。

社員は、見るからに怖そう。声も低くいかにもオラオラ系って感じで、ヤクザの子分的な顔の見た目である。

社員は、前途の通りなんだか柔らかい雰囲気で笑顔がキュート。この人の関西弁はとても柔らかい感じがある。

『ほうほう。きっと社員が、あの噂のパワハラ上司に違いない。気をつけなければ…。』

そんなことを考えていた私に、社員が、それぞれ自己紹介をしてくれた。

「俺もつい1か月前に関西方面から赴任してきたばっかりや。新人同士、これからよろしくな。」

私 「(え、!?)…あ、はい!そうだったんですね!こちらこそよろしくお願い致します!」

心の中『ん?…1か月前に来たばっか?てことは、こいつが噂のパワハラ上司じゃないのか!?』

と疑問が浮かび考え込んでいた私に、

「まぁまぁ。とにかく焦らず少しづつ慣れていったらいいで。明日初出勤になるけど、いきなり店回せなんて言わないから。

先ずは人の把握からしてってもらったらそれでいいから。まだ何もわからん状態やからな。(笑顔)」

私 「はい、了解致しました。ありがとうございます!明日からよろしくお願いします!(まさか…w(゚Д゚)w)」

そう…私が事前に得た情報「新しい上司はパワハラ系☆」と噂の上司とは、この社員のことだった!!!

私は『えぇーーー!!この人が!?パワハラ!?本当に!?こんな優しそうなのに???』

と、内心驚きと焦りでいっぱいいっぱいであった。

きっとその時の私は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔だったであろう。

そして何を隠そう、「新しい上司はパワハラ系☆」と噂のこの上司こそ、

近い将来、私の夫となるその人なのである。

さて、前回の記事で少し触れたが私は東京近郊に実家があり、転勤前は実家から都内の店舗に勤務していた。

そんな私がいきなり大自然豊かな広大な土地に引っ越し、1人暮らしを始めて約1年が経過しようとしていた頃

ある問題が発生していた。その問題とは…

休日、ヒマでヒマで仕方がない!!!ということ。

私はとても趣味が多い人間であり自他共に認める、俗世と物欲にまみれたザ・サブカルクソ女」である。

実家にいた頃は、休日には新たな情報収集に都内に出かけては新商品や欲しいものを発掘したり

大好きなパティスリーのサロンでお茶をしたりと、とにかく趣味巡りに忙しく充実した日々を送っていた。

しかし!この大自然広大な土地には、私が求める洋服が売っていない。

CDも売っていない。フィギュアもおもちゃも、欲しいものが一切、売っていないのだ!

ついでに大好きな系統のパティスリーも全然なかった…

このことは私にとって大問題であった。

『広大な自然の中暮らすということは、こういうことなのか…。』と生まれて初めて身に染みて理解しながら、せっかくの休日に暇を持て余していた。

そしてちょうどその頃、約1年の間にわかったことがあった。

「新しい上司はパワハラ系☆」こと、パワハラの噂が広がっていた私の上司は、

安心・安全なジェントルマン人間だったということだ。念のため言っておくが、褒めている。

私は非常に用心深く怖がりな性格である。

いくら第一印象が良かったからと言って、笑顔がキュートだからと言って、

「私は絶対に騙されないぞ。」と思いながら約1年間、上司を色んな角度から観察し続けた。

『こんなに優しいのにパワハラの噂があるってことは、ジキルとハイドみたいに2重人格的なやつなんじゃないかな…だとしたらいっきなりブチ切れられるかもしれない。用心しなければ…』

このように思い常に鋭い眼差しを向けて疑い続け、人見知りを爆発させていた。

しかし、観察すればする程

『あれ。(⊙ˍ⊙)この人、ものずごく人に気を遣っているし、常にそういう人なんだな。』と思うようになった。

更に衝撃だったのは、私や私の後輩たちがミスをした際、感情で怒られたことが全く無かったことだ。

それまで出逢ってきた上司たちなら、間違いなくブチ切れ案件レベルのミスでも。である。

「はぁ!?これ、どうするつもりだよ!?お前、どう責任取れんの!?で、だれがどうしてこうなったの!?ふっざけんなよ!!!!」

私たちがミスをした際は、このようなセリフがこれまで出逢ってきた上司たちの普通の反応である。

しかし、このパワハラの噂が絶えない上司は、

「あぁ、そうなん?仕方ないでしょ。どうにかできないか動いてみるから、もうあとはいいよ。」

けろっとした感じでこう言って、終了。なのだ!!衝撃であった!

これまで大きなミスを犯した日の帰りは、上司のもとに駆け寄り、反省と謝罪を述べて上司を見送ってから帰るのが普通だと思っていた。今思うと、どんだけ上司が人として偉いんだよそこまでする必要ないだろ。と突っ込みたくなるが…

しかし、このパワハラ上司は

「そんなん、いらんいらん。責任追及したって起こったことは変わらないやん。まぁこれから気を付けてもらえたらいいよ。そもそも、緊急事態の時くらいしか仕事せぇへんから、俺は。今日は仕事したわ。w」

ねぇ、パワハラどころか、もしかして、神様ですか…??w(゚Д゚)w

もう一つ、私が都内の店舗に勤務していた頃は、毎日終電で帰っていたため家に着くのはマジで夜中の1時頃だった。

その都内の店舗よりも売り上げが良い店舗に転勤を言い渡された時は

『マジかよ…もうこれ以上は体力的に無理かも。』と思い絶望していたのだが、

何と現実は、どんなに忙しい日でも夜21:30過ぎには家に着く。という、夢のような毎日だったのである!

私は非常に感動した。

これも「ダラダラと長く働いても意味が無い。みんな、早く帰りたいやろ?」という上司の方針だったのである。

激務に変わりはなかったが、パワハラの噂が絶えないこの上司のおかげで、体力的な面とメンタル面、両方共に癒され始めたのだった。

「上司によってここまでメンタルと体調も変わるんだな…」と心底思い、感謝した。

まさに「上司ガチャ」とはこのことではないか。これまでのことが「何かの修行」だったのかな?え、あの辛い毎日って、現実だったっけ??と思えてならなかった。

このように約1年の時を過ごすうち、パワハラ上司に対しての疑心暗鬼は少しづつ消え信頼が増して行ったのだが、私はどうしても気になっていた。

『この人が、どうしてパワハラの噂しか広がっていないのだろうか…。』

ある時、ずっとずっと気になっていたことを直接上司に聞いてみた。

不躾な質問であることは理解していた。

しかし毎日共に働く中で、それを聞いたところで怒ったりする人では無いし、聞けば正直に答えてくれるという信頼感があった。

私「この店に転勤が決まったとき、上司のことを『パワハラ系だよ』って何人かから聞いたんですけど、一緒に働かせてもらってるとそうは思えなくて。むしろ私にとってはこれまで体験したこと無いほどのありがたい労働環境なんですけど…。かつてはパワハラ系だったんですか??」

上「あぁ、そうやで。昔はね殺してやるくらいの勢いで怒鳴って発狂してたし、絶対反論なんてさせなかった。w」

私「え、マジっすか!?なんか色々、驚きです!事実だったんですね!でもどうして、今は違うんですか??」

上「うぅーん、そうやって自分がされてたから、それが当たり前と思ってたんやろうな。でもそのやり方してたら、もうあかんな。って、思ったからかな。」

私「なんでもうあかん。って、思ったんですか?」

上「そんなんやってっても、良いことないからな。1個も。それに気づいたってだけ。」

私「でも、それまでの自分を180度変えるって、大変じゃなかったですか。普段怒鳴り散らしてたのに。絶対、イライラもするじゃないですか。自分が間違ってたって、認めるのもしんどくなかったんですか。」

上「諦めに近いかな。それに人を変えようとするより、自分を変えるほうがずっと楽だったかなー。w」

私「………。」

怒鳴り発狂していたのは事実だった。私が最も嫌なパワハラである。

しかしその根底には「相手の成長」「会社のため」を思う心があったのだ。

パワハラする張本人は大抵、「部下のため・会社のため」と、本心で思っているそうだ。

しかし、怒鳴って発狂し部下を精神的に追いつめても、結果的に良かったことなんて1個も無かった。

他人を成長させるためという自分勝手な心があることも理解した時、自分自身を変えようと思ったのだというようなことを言っていた。

そしてそのことに気がついてから今日までずっと、今のスタンスでいるのだ。

自分を客観的に見つめて間違いを正すって、簡単なようで難しいことだと私は今でも本当に思う。

それに私はこれまで「自分が間違っていた」とサラッと認めてしまう上司に出会ったことが無かったので、この話を聞いてとても驚いたのだった。

私「私は、人はいつでも自分次第で生まれ変われると本気で思ってますが、それが大変なことなのも理解しているつもりです。すごいと思いました。初めて、そう思える上司と出会えました。

怒鳴り散らかしてた時に出会わなくて本当に良かったですけど…w。ありがとうございました。」

上「なんもすごくないよ。みんな、中々わかんないねんな。正しいとホントに思ってしまってるからな。」

私「それにしても、パワハラの噂、そんな昔のことなのに広がり過ぎじゃないですか!?私、知り合いに訂正しておきますわ!こんなに最高の労働環境なのに!私の役目は、それですね!」

上「いい、いい。そんなんしなくていいから。過去のパワハラは事実なわけだし。」

私「確かに…。昔の鬼上司しか知らない人からしたら、今の菩薩上司の状況を説明したとしても、誰も信じてくれないでしょうね…。相当たくさんの人から恨まれてるでしょうしね…。」

上「それは言い過ぎやんな。」

私「あ、すみません。」

こうして、上司に対して信頼と尊敬も生まれた私であったが、

まだまだ「恋」は始まらない…。

さすがに次で始まる予定。の筈。である。

<続く>

皆様、長くなってしまい誠に申し訳ありません。でも読んで下さり、本当にありがとうございました☆彡

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