私の自己紹介には、「現在無職」とある。
しかし実はつい最近、私は再びアルバイトとして働き始めた。
久しぶりに受けたバイトの面接は意外にも割と楽しく、こんな経験は初めてのことであった。
今回は、これまでの人生で私が受けた数々の面接の中でも印象に残っているエピソードをお話しようと思う。
私は2017年にうつ病を発症し、休職した後に夫と出会った職場を退職した。
退職して関西に移り住み3年が経った頃、うつ病は寛解した。そして支えてくれた人々のおかげですっかり元気を取り戻した私は、久しぶりに
「そろそろ働いてみよう!」という、とても自然発生的で前向きな感情が湧いてきた。
これは自分の中でもかなり嬉しい進歩だった。
さあ、思い立ったが吉日!である。
早速インディードに登録し、扶養内のパートタイマーで働けそうな仕事を探しまくる日々が始まった。
たかがバイト、されどバイト。
自分の精神状態が大きく左右されるであろうバイト先選びにはいつも真剣な上こだわりまくりの私であるが、この時は久しぶりのバイト先選びだったからなのか?引き寄せられたからなのか?わからないが、次々にヘンテコな体験をすることになる。
先ず私が応募したのは、最寄りの駅ビルに入っている雑貨屋だった。
当時の私はとにかく物欲と俗世にまみれきったクソ女で、おシャンティな雑貨屋で働くことは私の長年の夢でもあったのだ。
その雑貨屋は駅ビルの中を通過する際に必ず目にする場所に位置しており、店はガラス張りで変わった造りをしていて、
普段は頼りない私の脳みそも「駅ビルには変わった雑貨屋がある!」としっかり記憶してくれていた程、その雑貨屋は駅ビル内でとても目立っていた。
「あのガラス張りの雑貨屋さんかぁ!良いじゃん!!家から近いし、ぶっちゃけ暇そうだし!楽に社会復帰できそう!ウシシ…☆」
世の中を舐め腐った態度で早速応募してみたところ、すぐに面接をしてもらえることになった。
面接当日、緊張と少しの期待を抱えながら雑貨屋に向かった。
そして店に入った私は一瞬で店内の光景に驚き、違和感を感じ、息をのんだ…。
何故かというと、綺麗なガラス張りの店内の棚にはびっしり!!!招き猫が並べられていたのだ!
もはや雑貨屋というより招き猫屋である。
大・中・小サイズと種類も豊富で、私はこれまでの人生でこんなに大量の招き猫を見たことが無かったため衝撃的な初体験だった。
何十体、いや何百体もの招き猫ちゃんたちが私を見ている。(これは、マジ。)
「……(ごくり。)…なんか、夢見ていた雑貨屋さんとだいぶ雰囲気が違う…?」
目を凝らして必死に招き猫以外の商品を探してみた。
すると、龍とかのガラス細工や、いかにも福っぽい置き物。高級そうな和柄のお皿や、おばあちゃんの手作り風ハンドメイドお人形たちもが、一斉に私を見つめている…。
「………………。ಠ▃ಠ」
とりあえず、動揺をひた隠しにしながら店員さんに話しかけた。
私 「すみません、本日、面接のお約束をしているマオと申します。」
店員さん 「あ、はい。聞いております。こちらへどうぞ。」
笑顔が素敵な店員さんが通してくれたのは、レジの奥にある、布で仕切られた簡易的なスペースだった。
その中からふらふら~っと、人生にくたびれ果てた表情の女性が出て来て
「はじめまして。私が責任者です。こちらで面接を行いますので、どうぞ。」
と言った。女性が着ているうすぼけた色のシャツは、よれよれである。
私は『店の商品は全部幸福とか金運に関連する物なのに…この責任者は見るからにくたびれ果てているぞ…。本当に大丈夫かな?ಠ_ಠ』
と、めちゃくちゃ大きなお世話な上に失礼極まりないことを思っていた。
そして面接が始まった。
始まってしまえば「あぁ、面接って、こんな感じだった!」と、その感覚を思い出し緊張もほぐれ、当たり障りのない会話が繰り広げられていた。
しかし私は面接をしてもらいながら重大なことに気がついていた。そして焦っていた。
焦りの理由はズバリ
このお店で働きたい気持ちが全く湧いていないということだ。最低である。本当に申し訳ない。
「働こう!」と思った時は、心の底から希望に満ちていた。
『千と千尋の神隠し』の千尋のごとく
「ここで、働かせてください!!!!」
と、大声でお願い出来る筈であった。
しかしこんなにも無数の招き猫の視線を一斉に浴びた上、くたびれ果てたよれよれの責任者の姿を目にしてすっかりヒヨった私は、自分の好みや趣向を度外視して求人に応募してしまっていたことに面接中に気がついたのだ。
これが店内に入った瞬間に感じた強烈な違和感の正体だったのである。
よくよく考えてみれば私はその店を横目に通り過ぎるだけで、入店したことすら無かったことにもこの時気がついた。
そして私は何故かその面接に受かる気満々でいた。何故私はこうもバカげた勘違いをしてしまうのか?
…そのため内心
『ヤバいヤバい!この店で全く働きたくないのに、このままだと面接に受かってしまう!(⊙﹏⊙)どうやって理由をつけてキャンセルしよう…』
と、割と本気で悩んでいた。もうこの時の私はどうかしている。
こんな事を考えている内に面接の時間はあっという間に過ぎ去っていった…。
そしてモヤモヤした気持ちを抱えながら数日過ごした後の面接の結果は……不採用!
先程も言ったが私はこの雑貨屋で全く働きたいと思えず、どうやって理由をつけてキャンセルしようかと本気で悩んでいたくせに、不採用の通知には酷く落ち込んだ。
「不採用だった…何がダメだったんだろう…ಥ_ಥ」一人では立ち直れず、夫に心の内を打ち明けた。
夫は「落ちて良かったじゃん。あんなに嫌がってたくせに何落ち込んでんの。店からしたらイイ迷惑だわ。面接してもらえたことをありがたいと思え。」と言った。
その通りである。
後日、この店を知る友人に面接を受けたことを話した。
友「マオさん…、なんで面接受けようと思ったんですか??店をディスってるとかじゃなくて、どう考えても合ってないと思いますけど…。」
と遠慮がちにハッキリ言ってくれた。
その通りである…。
次に面接を受けたのは、大型ショッピングモールに入っている赤ちゃんグッズ専門メーカーのお店だった。
前回の招き猫屋の反省を生かそうと、よくよく考えての応募であった。
私はもともとこの赤ちゃんメーカーが好きで一時期は転職したいとも思っていた程だった。それに赤ちゃんや子供も大好きである!大人とは無理だが、あいつらとは何故かすぐに仲良くなれる!
面接を受けてみようと決意してから、店内や働いている方々の雰囲気も事前に下見に行った上で
『うん、ここならきっと大丈夫!働いてみたい!』
と心から思えたので応募したところ、またすぐに面接してもらえることになったのである。
いつになくポジティブな気持ちで、私にしては珍しく自信を持って挑んだ面接は順調に進んだ。
店長さんは優しそうな雰囲気の女性の方で物腰も柔らかく、私の「働きたい!」欲は心の中でより大きくなっていた。
面接は順調に進み、よくある「最後の質問」的な会話も無事に終了した。
私は『これで一通りの会話は終わったな。ふぅ。』
と安堵し気を抜いた瞬間、最後にいきなりこう聞かれた。
店長さん「では最後に、ここ2,3年以内で患った病気や、持病などはありますか?」
私「………(⊙ˍ⊙)………。」微塵も予想していなかった質問を投げかけられ、一瞬フリーズ。
(私の脳内)『えっ…。えっ!?病気…。病気っ!?w(゚Д゚)w』
脳内会議は一瞬にして大荒れの国会状態。
『この人、エスパーか何か!?私がうつ病だったことを知ってるのかな!?そんで、うつ病だったことを隠して面接受けたらダメだったのかな!?最初からカミングアウトしておくべきだった!?やばいよやばいよー!』
パニックチームのこの主張に対し
『おいおいパニックチームよ、よく考えてくれ。そんなわけあるかい!この店長さんとは正真正銘、今日が初対面ではないか。私の何を知るはずもないではないか。ちょいと落ち着きな。』
パニックチームの逆側にいる超絶冷静チームがこのように私を説得し始めた。更に
『そんなことより、病歴とか持病を聞かれる面接なんて今まで無かった。一体どういうことなんだろうか…。でもひとつだけ、今言えることがある!確実に、この問いに対する返答次第ではマズいこと(不採用)になる!!くれぐれも慎重に答えるべし!』
ありがとう、超絶冷静チームのみんな。ಥ_ಥ
私は落ち着きを取り戻し、パニックを乗り越えた。そして瞬時にはじき出した最善の答え。
それは…
「はい。実は、3年前にうつ病になり、前職を退職しております。でも今現在は寛解しているので、働くにあたり問題はないかと思っています。」
そう、正直が一番!作戦。
しかし私は、人の顔色やネガティブな空気を読むことに関してだけは非常に高い能力を持っている。
店長さんの表情がほんの微かに曇ったように感じた。
『あぁー!やったな、これ。超絶冷静チームよ、申し訳ない。どうやら私は間違いを犯したみたいだ。皆の頑張りを恐らく無駄にしてしまった…。しかしどんな結果だろうと胸を張って素直に受け入れよう。私たちは、嘘はついていないのだから…。』
しばらくすると、ご丁寧に自宅に履歴書が返送されてきて不採用となったのであった…。
結局のところ病歴だけが不採用の理由なのかはわからないのであるが、後にも先にも病歴や持病を面接で聞かれたのはこの時だけであった。
バイトの面接も色々である。
そしてこのような私の状況を見かねた夫がとうとう、駅のフリー冊子に載っていたお菓子屋さんの求人を見つけて私におススメしてきた。
夫「これ、マオさんに合ってるんじゃない?良いと思うよ。受けてみれば?」
それは前回不採用となった赤ちゃんグッツメーカーの店と同じ大型ショッピングモール内に入っているお菓子屋さんの求人だった。
私は性格の悪い女で、夫からおススメされても素直に
「いいね!応募してみるよ!」とは決してならない。
この時もまさにそうだった。私は「えぇー…そんなにいいかなぁ…?本当に?合ってるぅ?ちょっとだけ考えてみるよ。」と実に憎たらしいことを口にしていた。
そして2・3日よくよく考えてみた結果、
「夫!!お菓子屋さん、いいかも!!応募してみようかな!?」と、まるで自分で見つけた求人であるかのように、必殺手のひら返しを夫にお見舞いした。
夫は怒ったりすることなくただ呆れた様子で
「だから最初からそう言ってるんだけどね。さっさと応募してみろ。多分、受かるから。」
と言った。
この時の面接の結果は……なんと、採用ー!!!!
ありがとう!!夫よ!!私ひとりでは確実にこの求人に応募していなかった!
それに考えてみたら、これまで受けた中で1番私に合うお店と仕事だったかもしれない…。(呆れ)
お菓子屋さんで働き始めてみると、思えば私は関西に引っ越して来てから仲良くなった知り合いは1人しか居なかったため人との交流が増えたことが単純に嬉しかった。
しかし、仕事とはいえ人と関われば色々なことが起こり、仕事より人間関係に神経を擦り減らしストレスが溜まっていく…。というのが働く現実、この世の常である…。
人間同士のごたごたに耐えかねた私は精神の限界を迎え、約2年働いた後お菓子屋さんを退職したのである。
私は人間が発生させるネガティブな感情の渦に巻き込まれてしまい、自分自身が振り回されることが苦痛で仕方がなく耐えられなかった。その対処の仕方や自分との向き合い方を当時は知らなかったのだ。
こうして退職した後は自分自身を見つめ、世の中を見つめ生き方を模索しているうちにスピリチュアルに出会い、何故か湧いてきた気持ちをそのまま受け入れ
「ブログをやってみよう!!」
と決意した。
そして、ブログを始めると同時にまた
「コツコツ働いて、お金を稼ごう!!」
という気持ちが湧いてきて、つい先日面接を受けてみたところ、大変ありがたいことに採用してもらえることになったのである。
因みに最近始まったこの仕事も、実は夫が見つけて私におススメしてくれたものだった。
夫は「この求人、良いじゃん!マオさん、ここならご機嫌に働けると思うよ。」と言ってきた。
しかし、私はまたもや
「えぇー、本当にぃ!?その求人なら私も見たんだけど。でもさぁ……」と、ウジウジと文句を言いまくった。
そして2・3日考えた後にまた
「夫!!例の求人、いいかも!!応募してみようかな!?」
…これで手のひら返しは一体何度目だろうか…。
夫は「いつもそうだけど、こちらは最初から言ってるのに、なんで何日も経たないと気づかないの?もういいからさっさと応募しろ。遅くなった分、受かるかはわかんないけどな。」
と言った。
…その通り、完全同意である…。
今回の職場は私と似たタイプの人が集まっていてとても心地が良い。皆争い事や揉め事を心底面倒だと思っているため、とても平和に過ごせている。
他人のミスにも寛大で「人間なんだから、間違うことなんて当然あるでしょ。」とケロッとした感じで言っている。
こんなにストレスの少ない職場は初めてである。
この現実を生きれていることが、本当に嬉しくて楽しい。
それでもきっと、今後も不安になったり辛い出来事に落ち込む日が来るだろう。
そんな時は、落ち込んでいる自分自身を、私が受け入れてあげれば良いだけだ。
誰もがそうやって一歩ずつ歩んでいるのだ。
皆さん、何度でも何度でも、共に立ち直りましょう。
おしまい。
夫の助言を素直に受け入れる。2024年の目標です。最後まで読んで下さり、誠にありがとうございました☆彡
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